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能勢 聖紅 × 装飾家

18歳で「装飾家」としての活動をスタートし、野外フェスティバルのステージをはじめ1,000を超える舞台装飾を手がけてきた能勢さん。さまざまなアーティストとの異色のコラボレーションも積極的に行い、フローリストとしても活躍の場を広げています。

パンクバンドのステージを「美しい」と感じた

父がライブハウス「岡山PEPPERLAND」の経営をしていたため、幼少の頃から音楽やアート、ファッションがとても身近な環境で育ちました。毎日変わる演者や、おめかしして集まるお客さんからの刺激をバシバシ受けていたんです。

当時はパンクバンドの全盛期。オーナーの娘でしたのでアーティストのお兄さんやお姉さんが公演前に気さくに接してくれるのですが、いざステージが始まると「この場で死んでもいい」くらいの覚悟で情熱を燃やす姿に胸を打たれました。パンクのライブを怖いとは思わず、「美しい」と感じたことをよく憶えています。

欲しいモノは、自分の手で作ればいい

私の中で「モノづくり」の概念が芽吹いたのも幼少の頃でした。ある日、父に「ぬり絵を買って」とお願いすると、彼は「ほしいなら作りなさい」と言ったんです。その一言が子どもながらに目からウロコで、自分の中で「ないものは作ればいいんだ!」という答えが出ました。それから必要なものはなんでも手作りするようになりました。

ライブハウスオーナー、写真家、文筆家、ラジオDJなどさまざまな顔を持つ父はシュタイナー研究者に向けての講演なども行っている研究者ですが、私が何をしていても「止めない人」でした。父はモノづくりをする人ではありませんが、私にとって大きな存在です。

装飾家として、さまざまな表現に携わる


花器装花 2017年
Collaboration 吹きガラス作家 水口智貴/撮影 森貴綾

高校生になった私は、平日はライブハウスの手伝いをして週末になると東京や大阪のライブやイベントに出かけるようになりました。そこで出会った主催者に「今度、私の絵を飾らせてください!」と申し出たのがきっかけで装飾家としてのキャリアがスタートしました。そこからクチコミでオファーが増えていき、フジロックフェステバルやサマーソニックなどの大型フェスからも依頼が来るようになりました。

現在は舞台装飾以外にもオブジェやインスタレーション、生花の活け込み、ライブペインティング、アートディレクションなどの依頼も増え、さまざまなアーティストとのコラボレーションも積極的に行っています。

自分はアーティストなんだと感じた瞬間


国指定重要無形文化財 大橋家住宅
高梁川マルシェ 会場装花 2018年

私が至福を感じるのは、コラボレーションを通じて見たことのないものが生み出せた瞬間です。「表現」の中に私とは違う思想と経験が加わることで違うアイデアが生まれ、ミーティングから制作までライブ感が止まらないことにたまらない魅力を感じます。

そして、最近の自分の中で「何かをつかんだ!」と感じた瞬間は、昨秋手がけた国指定重要無形文化財大橋家住宅でのインスタレーションでした。おそらく一般の方の理解を超えた作品となり、見た目やバランスは皆が美しいと思えるものではありませんでした。しかし、この作品で自分が創りたい作品を、感性の赴くまま表現することができたんです。作家活動を20年以上行ってきて初めて「自分はアーティストなんだ!」と心の底から感じることができ、この先はブレることなく自分の進むべき道を突き進んでいけると直感した瞬間でした。

美しいと感じるモノを、信じて作りつづける


岡山県 倉敷アイビースクエア
DENIMonLIFE 会場装飾 2018年
Collaboration BIGJOHN/撮影 宮脇慎太郎

これからチャレンジしていきたいプロジェクトもたくさんあります。たとえば、パリコレなど海外ファッションショーで舞台装飾や花の活け込みを手がける準備を進めているところです。また、世界を変えるのはやはり「子どもたちへの教育」だと考えているため、教育分野への進出も予定しています。私がこれまで取り組んできた「造形」と「植物」の分野で世の中に貢献していきたいですね。

そしてこれからも、自分が美しいと思うモノを自分を信じて創りつづけようと考えています。他人の賛否を気にしている場合ではないくらい自分が創造する作品に意識を向け突き進みます。


松坂屋名古屋店/日本の職人展 会場装飾 2018年
Collaboration 川崎漆器店&造景集団某(赤塚剛氏 見城周氏)/撮影 スタジオ空

グライフェンなヒト file.06

Profile/能勢 聖紅(のせ せいこう)

装飾家。全国的に活躍する、数少ないデコレーションアーティストである。1996年に最初のデコレーション作品を公開以来、1,000会場を超えるイベントの装飾を手がける。国内最大規模の動員数を誇る「SUMMER SONIC」での作品発表・アートディレクションをはじめ、スペインで行なわれた「ROCKET FESTIVAL」でも作品を発表。

2013年の「岡山県立美術館25周年記念展」では国内初となるデコレーションの美術館展示で42mを超える大作を発表。栃木県二期倶楽部で行われた「山のシューレ」では12m超のライブペイントを成功させた。その後も2016年に日本橋三越本店で行われた「倉敷アーツ&ファブリカ展」での生花装飾、大分県立美術館でのデコレーション作品展示、2018年には「橋の下世界音楽祭」にて造景集団某(なにがし)とのインスタレーション展示や沖縄県で行われた「ゼクシィ25周年プライベートパーティー」での装飾ディレクションを担当、サントリーのクラフトジン「六(ROKU)」のCMでは生花装飾を任された。数々のアーティストとコラボレーションを重ねる彼女のスタイルが自身の表現領域をいっそう広げている。


SUNTORY ジャパニーズクラフトジン 六 roku
海外向けTVCM撮影風景