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元 NHK科学・環境番組部専任ディレクター 北折 一 × ガッテンGatten

NHK「ためしてガッテン」の立ち上げからディレクターとして携わり、その後は演出担当デスクとして18年にわたり人気番組を支え続けた北折氏。NHKを退職した現在は講演活動で全国を巡り、自らの減量経験をもとにしたダイエット本も話題となっています。

生活科学番組をやりたいわけじゃなかった

大学時代に熱中したのは、釣りと演劇。休日はバイクで渓谷に分け入り、複数の劇団を掛け持ちして積極的に活動していました。就職先に選んだのはマスコミ業界。演劇のようにみんなでひとつのものを作り上げる部分に共通点があると感じ、番組ディレクターとしてNHKに入局しました。
当時のNHKは「大型ドキュメンタリーを作ってナンボ」の世界。しかし、事故遺族の寂しい食卓を撮るために何人ものスタッフが現場に入り、照明を当て調整をして…というドキュメンタリーの手法に疑問を感じていました。そこで、人の気持ちに土足で入ることなく撮れる動物番組が作りたいと思ったのですが空きがなく、生活科学番組を担当することになりました。

発明・発見したことを『文法化』する

「ためしてガッテン」立ち上げに携わったのは29歳の頃でした。複数のディレクターが関わるため、私の担当は3ヶ月に1本ほどのペース。「自分の回は絶対に面白いものにする!」と意気込み、数字も取れていたのですが、他の回が足を引っ張ると、自分の回の放送も見てもらえなくなる。それに我慢ができず、総合演出デスクというポジションを新設してもらいました。
私が総合演出を手がけるようになってからは高視聴率を連発するようになりました。実験的な演出法を試し、発明・発見したことを『文法化』することでノウハウを共有していきました。ある時期からは「ストーリーさえ面白くすれば、視聴者はかなり深い内容まで付いてきてくれる!」と確信し、表層的なネタを探すのではなくストーリーにグッとはまり込んでもらうためにはどうすればいいのかを考えるようになったんです。

番組を通じて『幸せ』を提供する

「ためしてガッテン」制作におけるキーワードは『幸せ』でした。見ることで幸せな気持ちになったり、実際に幸せなことが起こる仕掛けを番組に盛り込んでいきました。たとえば「チャーハン」をテーマにした場合、ガッテン流にすることで「めちゃくちゃ美味しいじゃん!」と感じてもらえれば、作るたびに幸せな気持ちになれると思うんです。しかも、見ている方のお腹がいっぱいの時でも「今からでも作ってみたい!」と思わせる魅力的なストーリー展開にすることで、美味しく作るコツをしっかりと覚えてもらえます。

静岡県栄養士会での講演。 講演後の質問にも丁寧に対応する北折氏。

「聞く耳モード」をこしらえる

現在は年間100本ほどの講演を行っています。テレビでは常に新しい情報の提供に追われますが、講演なら大切なことを多くの場所で何度でも伝えることができる。本当に大切なことって実はそれほどあるわけではないので、それを確実に受け取ってもらうための活動が今はできているのかなと思っています。医療に従事されている方への研修で必ず伝えているのは、 「聞く耳モード」をこしらえるまでは「説明」をしないということ。正しい情報をきちんと伝える努力をするのではなく、聞きたくてしかたがない状態を作ってから情報を渡すことを鉄則とするよう伝えています。

『幸せの連鎖』を生み出したい

変な例えですが、私が至福を感じるのは“人を穴に落とす時”なんです(笑)。若いディレクターに「穴に落とすにはどうしたらいい?」と質問すると、多くは「いい落とし穴をつくる」と答えます。しかし、穴さえ良ければ落ちるわけではありません。正解は、穴までの道を確実に歩かせること。そこに気づくと、そのディレクターは良い番組を生み出せるようになるんです。
また、講演会場には、私のダイエット本を読んだ方がわざわざ痩せたグラフを持ってきてくれることや、ダイエットに成功したお父さんが「家族全員に読ませています!」と伝えてくれたこともあります。本を読まされる家族はちょっと迷惑かもしれませんが、喜ぶお父さんの姿を見てきっと嬉しい気持ちになっていると思うんです。私が発見したことや工夫したことがきっかけとなって『幸せの連鎖』が続いていくことを、とても嬉しく感じています。

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Profile / 北折 一(きたおり はじめ)

1964年2月生まれ 愛知県出身 名古屋大学卒
元NHK科学・環境番組部専任ディレクター「ためしてガッテン」演出担当デスク/NHK放送研修センター・チーフディレクター

現在は、おもに健康教育の分野で「人々のよりよい生活のお手伝い」を目指して、「健康情報の読み解き方・伝え方」「生活習慣病予防のダイエット」などの講演を行うほか、執筆活動も。自らの減量経験をもとに出したダイエット本が話題に。

学生時代から、渓流釣りが大好き。そこから派生して、沢登り・登山・クライミング・山菜採り・キノコ採り・海外登山など、楽しそうなことは次々やってみたくなる性分。
1996年パキスタン未踏峰(5961m)に挑戦するも敗退。1997年アラスカ・マッキンリー(当時6194m)に世界で初めてトラの着ぐるみで登頂。最近は高いところ好きから一転して、海水魚を獲るのが趣味に。
一方で、気に入った酒屋さんの近所に自宅を建てちゃうほどのお酒好き。2000年より、「狛江でおいしい地酒を楽しむ会」運営委員。